2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

鶴見花月園

平岡廣高氏 鶴見町 曰く絶対に株式或は合資にせず曰く決して之れを子孫に継承せしめず曰く挙げて民衆の共有遊園地たらしむ此三大信条を厳守して死して已むの勇気を鼓しつゝ日々二百有余の従業員と共に活動しつゝある人こそ鶴見の花月園か花月園の鶴見かと謳…

花月楼女将(その3)

平岡静子(ひらおか・しずこ) 事業家 1876(明治9)年3月~不詳 花月園を支えて斬新なセンス 花月園競輪場のある横浜鶴見の丘陵一帯には、かつて、東洋一を誇るテーマパークがあった。経営は新橋で料亭花月楼を営む平岡広高。静子はその妻である。 平岡静子…

新橋花月楼(その6)三井

(二) 火吹達摩も尻が暖れば湯気を吹く。豈夫れ三井家の奉公人のみ懐中暖りて気を持たずに我慢がならうか。重役と云はず使用人と云はず、相当々々の制札は何時か踏折り、衣食住は不相当に贅沢を尽し、娯楽は不相当に度を過し、貯蓄は不相当に太くなつた。吝…

花月楼女将(その2)

「花月」の女将は、中之町(今の芭蕉庵の家)の印判屋、河野元介の娘で、附属小学校に通ってる頃から、その美貌と才気が評判になってた。殊に舞が上手で、妹の「お花」(多分)さんとの合舞は、エライ人気で、河野の姉妹が演るというと、どこに舞浚(温習会…

花月楼女将

明治初期から中期にかけて、羽振りがよく、而かも、よく気がつき、人情に厚く、評判のよかつたマダムと云へば、久保町の賣茶の女将であつた。全く彼女は、稀れに見る厳格な女性で、小言もよく云つたが、しかし、その半面には、又とてもよく気がつき、人情厚…

菅野の下で2年5ヶ月の旗手修行を積んだ尾形が独立したのは、明治44年の1月1日である。元旦を期して多賀厩舎に迎えられた。 この多賀厩舎は目黒にあって、多賀一、平岡広高、多賀半蔵の三兄弟によるHクラブが運営していた。 長男の一は、宮内省主馬寮に…

花月華壇(その3)成金鈴久

彼れは新橋花月主人が窮状を訴ふるに及ぶや、直ちに向島花月華壇を希望値段の二万円にて買入れ、一万円の手入をなして肥馬軽車を備へ、三十人を一時に為し得るの善美を尽した欧風食堂をも設け、料理人三四人を置き二六時中訪問来者の来り食事するに任せた。…

花月華壇(その2)

「新橋花月お家騒動」 新橋竹川町廿一番地の料理店花月楼事平岡廣高は五六年前東海道鈴川の海岸に風景佳絶の地を相して茶屋を新築し、避暑、避寒の客をひいて大儲をなさんとし、一時は繁昌したりが、つなみの為に家屋を破壊され、大損をなしたりも之れに屈せ…

花月華壇

向島花月華壇 〔桜のトン子ルも最早昨日の夢となつて了つたが、香床しき若葉の葉隠れに、後れ咲の姥桜をたづねて、墨陀の堤に暮れ行く者の名残を惜む情深き人の為め、花月華壇を御紹介申す。〕 花月華壇主人 ▲先づ此花壇の起源と申しまするのは、二十七八年…

花月巻(その2)

戸板 正月に結う日本髪というものが、最近では新日本髪なんてことをいっていますね。新日本髪というといかにも最近らしゅうございますけれど、日本髪と洋風の髪との交替期というのはいつごろなんですか。 久保田 洋髪がいちばん一般の日本人にとり入れられた…

新橋花月楼(その5)多賀ふみ

多賀ふみ 湖月楼主人 芝区烏森町四番地(電話新橋四九三番) 嘉永元年戊申二月生 旧仙台藩士の女故ありて肥前唐津藩主小笠原家に奉仕し同藩士多賀家に嫁す其夫右金次新の変藩籍を奉還して帰商し上京して新橋の地に割烹亭花月を創む時に明治元年なり尋いで同…

東京市中音楽隊

(略)明治二十三年頃は、大分に銀座も賑って来ましたが、竹川町の花月が、いろいろ変化した家で、あそこの引札が振っていました。秋涼朝夕に相催し御宴会の時節と相成此際弊楼は(花月楼といっていました)一層大勉強仕候御多勢様の御宴会は左の定価にて御…

新橋花月楼(その4)平岡得甫とヘベライ先生

花月園主平岡得甫老とヘベライ先生 先年物故した一代の奇傑、鶴見花月園主平岡得甫さんが、新橋に紺屋の張場だつた二百余坪の空地を物色して、其処に花月楼(後に都下一流の割烹店)を創設したことは明治二年頃だつた。 地の利と繫昌を覘つた平岡さんの商略…

新橋花月楼(その3)

6 一日一室五十銭 芸者は素足、殊に手と足と歯は一生懸命自慢にして磨いたから、すきとおるように綺麗だった。寒中なんか手も足もまっ紅になって、それがまた殊の外に美しかったものです。姿恰好、先ず歌麿の錦絵と思えば大差なく、みんなお召を着ていまし…

新橋花月楼(その2)

私の家の斜め前に、黒板塀がながくつづく料理屋があった。その塀に小さな木戸があった、幼い私は一日に何度かは、その木戸を出入りしていた。玄関は銀座通りから二つ目を曲がったところにあって、いつも敷石が濡れて光り、竹の植込みが風に揺れていた。客用…

新橋花月楼

待合といふものはいかなる物にやおのれは知らねど、只もじの表よりみれば、かり初に人を待ちあはすのみの事なめりとみるに、あやしう唄女など呼上て酒打のみ燈あかくこゑひくゝ夜更るまで打興ずめり、家あるじは大方女子にて二人三人みめよき酌女もみゆ、家…

花月巻(その1)坊っちゃん

向うの方で漢学のお爺さんが歯のない口を歪めて、そりゃ聞えません伝兵衛さん、お前とわたしのその中は……とまでは無事に済したが、それから? と芸者に聞いている。爺さんなんて物覚えのわるいものだ。一人が博物を捕まえて近頃こないなのが、でけましたぜ、…