花月巻(その2)
戸板 正月に結う日本髪というものが、最近では新日本髪なんてことをいっていますね。新日本髪というといかにも最近らしゅうございますけれど、日本髪と洋風の髪との交替期というのはいつごろなんですか。
久保田 洋髪がいちばん一般の日本人にとり入れられた夜会巻じゃないですか。
小絲 あれは鹿鳴館の夜会からきたものですか。
久保田 つまり鏑木清方先生の・・・・・・。
戸板 「築地明石町」。
小絲 夜会巻で、素あわせを着ていますね。うしろにペンキ塗りのサクがあって、それに朝顔がからんでいる。平岡権八郎君のお母さんね。あの人なんかやっぱり当時の花月巻なんて頭をやっていましたね。
戸板 束髪っていうのは・・・・・・二〇三高地とは関係ないんですか。
久保田 もっと前を引っつめにしたものです。当時束髪パンてパンがあった。渦を巻いた・・・・・・。
戸板 いまは渦巻パンていいますね。
(「座談会 江戸・東京 春夏春秋」久保田万太郎、小絲源太郎、安藤鶴夫、司会戸板康二。遠藤元男編『江戸・東京風物詩』至文堂 昭和38年 P217)